我々に残されているもの

自粛となった週末、そして月曜日は新型ウイルスによって有名芸能人が亡くなったというニュースが駆け巡った。これで日本国民がより一層の危機感を持つことは間違いない。そしてそのことは、翻って私たちを刻一刻と締め付けていく。

この国の状況が、戦時中と被って見えるのは、大半の人が感じていることだろう。ある物事をきっかけに国の歯車がどんどん狂い、ついには国民の生活に支障が及んでいくという状況。国の命令に従うしかないというのは、戦争の時代とそう変わらない気がする。

先日の首相の会見は、我々にとってはより不安を与えるものでしかなかった。「芸術文化は、もちろん必要不可欠なものであります。しかし・・」以下はこのことに言及する素振りはなく、思い切った給付なんとかについて、連発していた。

目下のところ、幸先は見えない。世界中では、今こそ連帯を!という動きがあるそうだ。だが、やたらに大きなものでなく、ひとりひとりが自分自身で不安を取り除くことこそが大切なことだ。取り除けるようにすることが。

それは、例えば心から笑うことだったり、ひらめきを得ることだったり、何気ない日常に感動すること、などだろうか。

先日、行われたこんにゃく座オペラ塾公演は、とても感動的なものだった。誰ひとり、そこにいた者の中で、やったことに対して後悔をしたものはいなかったはずだ。「しかし」、ではなく、「だから、芸術文化は必要なのだ」というお手本のようなものだったと思う。

もちろん、見えない敵というのは難しい。恐れを持って行動しなければならない。だが、そのために個人を犠牲にしても構わない、という考えのほうが恐ろしい。金をどうこう、ということのほかに、こういう面白いことがある、こんなことに目を向けてみたら、とかについて時には議論してみたらどうですかねえ、首長の皆様がた!オリンピックのような派手なものだけに目を向けるのでなく!

 

熊本アウトリーチ

1/13〜18まで熊本は菊陽町で、チェリストの加藤文枝さんと共に、学校でのアウトリーチとリサイタルを行っていました。

アウトリーチってなに?と思われるかもしれませんが、音楽ホール等でする音楽のワークショップを、学校などホール外(=out)で行う、出前授業と言えるでしょう。

加藤さんは、ソリストとしてリサイタルをする一方で、日本全国でこのような活動を継続的に行っている、ユニークな音楽家です。

学生時代に随分とよく共演させてもらって、とても多くの刺激をもらっていましたが、今回約5,6年ぶりくらいに一緒に演奏しました。

その日程は8コマのアウトリーチを4日でこなし、最終日はリサイタルをするというなかなかハードなスケジュール。

最初の4コマは、菊陽西小学校の6年生4クラス。全校児童が1000人に届こうとするマンモス校です。

子どもたちの演奏に対する反応はとても様々で、元気のいいクラスもあれば思慮深いクラスもあって、クラス全体の雰囲気というものがあるのだなと強く思いました。でも、子どもたちはとても素直に、真剣に耳を傾けてくれました。

次に向かったのは菊陽南小学校。こちらは、4〜6年生に聴いてもらいましたが、その全員で40人くらいの、こじんまりとした学校です。4年生のダイレクトなはきはきとした物言いに対し、6年生はやっぱりすこし周りを伺いながら発言するといった感じがします。

菊陽北小学校の子たちは、現在音楽室が改修中だそうで、リサイタル会場でもある図書館ホールを使ってのインリーチ。よく響く会場の響きで、イマジネーションも膨らんだかな?

そのほか、地域の町民センターなどで、街の皆様の前でのミニコンサートなどもあり、観光などはする暇もなく、最終日のリサイタル。

プログラムのメインは、ショパンのチェロ・ソナタ。ショパン晩年に作られた、孤高の輝きを持った大作です。

加藤さんのコメントでは、シューマンの言った「花畑の下に隠された大砲」というところからインスピレーションを受けた、「血と思ったらバラのように」鮮烈な美を感じながら弾きたい、という言葉が印象に残っています。僕も最近ショパンのピアノ作品に取り組んでないけれど、また近づいてみようかな。そういえば、今年はショパンコンクールの年なんですね。

アウトリーチの時に子どもたちの見せてくれた笑顔、そしてコンサートやリサイタルでも、街の人々のあたたかい視線にとてもパワーをもらう日々でした。この地域は熊本地震でも大きな被害を受けた地域ですが、喪失感から立ち直る強さや、前向きさを持った人たちでした。

自分にとっては初の九州への旅でしたが、今回誘ってくれた加藤さん、アウトリーチのコーディネート(これら写真なども)をしてくださった図書館ホールの職員の皆さん、そしてあたたかく演奏者を迎えてくれた町民の方々、本当にありがとうございました。

ヒカルさん、と、辛島先生

正月は早々にこんにゃく座のイベントに参加しました。

「ヒカル忌」というもの。

https://konnyakuza.blogspot.com/2020/01/2020-15.html ←こちらがその報告

林光さんが亡くなられたのが1/5ということで、毎年メモリアルということでたくさんの方が集うイベントだそうだ。私は初めて参加しました。

というのも、私は林光さんとは、面識はないのです。

彼の最も親しい存在だった方々、その志を受け継いでいる方との自分の関わりでしか、その存在ははかることができない。

この会には、けれど、そんな自分も簡単に受け入れてくれるような雰囲気がありました。何よりも、彼の残した音楽を楽しもう、というような思いにあふれたものだったな。

音楽は、性格を表すものだとますます思うようになっているが、林光さんの音楽に少しでも触れたことのある者には、この会の性格はお分かりいただけるに違いない。

彼の音楽を愛する人が、こんなにもいる、ということ。それは本当に彼を喜ばせるに違いないでしょう。

会の中で一緒に弾いた山田百子さんと。

なんと彼女とは私が中高の頃、一度共演させてもらっていました。

10何年ぶりかの共演は、ヒカルさんのくれたプレゼントだったのかも?

 

1/13には、高校時代にお世話になっていた辛島先生が、門下生とともにコンサートを浜離宮朝日ホールで行います。私もトップバッターを務めます。

http://www.nipponartists.jp/ticket/td20200113.html

辛島先生も、林光さんとほとんど変わらない年齢ですが、彼はまだ現役として活動しています。コンサートでは、なんとシューベルトの即興曲全4曲を演奏されます。

それだけでも必聴のコンサートといえるでしょう。80歳を超えても、常に若々しい演奏をされる先生の演奏は。

私も、彼から受けた教えは今でも大切なものとして感じています。

先生の演奏には遠く及びませんが、今の自分を音楽で表現し、この演奏会を彩ることができればと思っています。